レンズ歪み
読み: れんずゆがみ
レンズの光学特性により直線が曲線として写る幾何学的な歪み。樽型歪曲と糸巻き型歪曲の 2 種類が代表的で、広角レンズほど顕著に現れる。
レンズ歪み (Lens Distortion) は、理想的な透視投影からの逸脱により、本来直線であるべき被写体が曲線として結像する幾何学的な収差である。レンズの設計上完全に排除することは困難であり、特に広角レンズやズームレンズの広角端で顕著に現れる。建築写真や測量、コンピュータビジョンにおいて正確な幾何学情報が必要な場面では、歪み補正が必須の前処理となる。
歪曲収差は光軸からの距離に応じた結像倍率の変化として数学的にモデル化される。Brown-Conrady モデルが最も広く使用され、放射方向と接線方向の歪みを多項式で表現する。
- 樽型歪曲 (バレルディストーション): 画面周辺部が外側に膨らむ歪み。広角レンズで典型的に発生し、直線が外側に湾曲する。魚眼レンズはこの歪みを極端に利用した設計である
- 糸巻き型歪曲 (ピンクッションディストーション): 画面周辺部が内側に引き込まれる歪み。望遠レンズやズームレンズの望遠端で発生しやすい
- 陣笠型歪曲: 樽型と糸巻き型が混在する複合歪み。画面中間部で樽型、周辺部で糸巻き型に転じる。一部のズームレンズで観察される
- 補正モデル:
r' = r(1 + k₁r² + k₂r⁴ + k₃r⁶)の放射歪みモデルが標準的。OpenCV のcalibrateCamera()でチェッカーボードパターンから歪み係数を推定できる
デジタルカメラではレンズプロファイルによるリアルタイム補正が一般的で、JPEG 出力時に自動適用される機種も多い。コンピュータビジョンではカメラキャリブレーションにより歪み係数を精密に推定し、3D 復元や AR アプリケーションの精度を確保する。