非可逆圧縮
読み: ひかぎゃくあっしゅく
元データを完全には復元できない圧縮方式。人間の知覚特性を利用して冗長な情報を削除し、高い圧縮率を実現する画像圧縮の基盤技術。
非可逆圧縮 (Lossy Compression) は、データの一部を不可逆的に削除することでファイルサイズを大幅に削減する圧縮方式である。圧縮後のデータから元のデータを完全に復元することはできないが、人間の知覚では違いが判別しにくいレベルで情報を間引くことで、実用上十分な品質を維持しながら劇的なサイズ削減を達成する。
画像における非可逆圧縮の代表的な手法は以下のとおりである。
- 変換符号化: DCT (離散コサイン変換) や DWT (離散ウェーブレット変換) で空間データを周波数領域に変換し、知覚的に重要度の低い高周波成分を量子化して削減する。JPEG が DCT を、JPEG 2000 が DWT を採用している
- 予測符号化: 隣接ピクセルや隣接ブロックからの予測値と実際の値の差分 (残差) のみを符号化する。WebP や AVIF で使用される手法で、画像内の空間的相関を効率的に除去する
- 色差サブサンプリング: 人間の目が輝度 (Y) より色差 (Cb/Cr) に鈍感であることを利用し、色情報の解像度を下げる。4:2:0 では色差の解像度が輝度の 1/4 になる
非可逆圧縮の最大の利点は圧縮率の高さである。JPEG では品質設定 80 程度で元ファイルの 10-20% まで削減できることが多い。Web での画像配信においては、ページ読み込み速度の向上と帯域幅の節約に直結し、ユーザー体験と SEO の両面で効果がある。
一方で「世代劣化」の問題がある。圧縮済みの画像を再度圧縮すると品質の劣化が累積する。編集作業中は可逆形式 (PNG、TIFF) で保存し、最終出力時にのみ非可逆圧縮を適用するワークフローが推奨される。品質パラメータの選定は、視覚品質とファイルサイズのトレードオフを考慮して用途ごとに最適値を見極める必要がある。